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  • 「地域商社」設立に向けて/海外産直プロジェクトの取り組みを学ぶ/第7回会員例会

     本年度の第7回会員例会が令和2年1月20日、ホテルメトロポリタン秋田で開かれ、会員22人(代理を含む)が出席した。「『海外産直プロジェクト』による輸出への取り組みと『地域商社』結成に向けて」と題して、大潟村あきたこまち生産者協会の事業開発部国際事業・農業JV班統括・加藤貴之さんが、プロジェクトの経緯や状況、今後の展開などを紹介。「地域商社設立に向けて、県内企業が結束し自らの力で輸出に向けた道を開拓することが必要だ」と呼び掛けた。
     初めに、担当委員会の地域と農業を考える委員会の涌井徹委員長が「委員会でコメの問題に取り組んで2年になる。今は輸出に絞って検討しているが、例会ではこまち協会の物流経費を下げる取り組みを紹介する。将来的には地域商社のような形をとることができれば、農産物や食品以外にも輸出を広げることができると考えている」とあいさつ。引き続き講演に移った。

    第7回会員例会/第2回地域と農業を考える委員会
    第7回会員例会

    講演の主な内容は次の通り。
     2011年の東日本大震災を機に放射性物質問題が起こり、福島をはじめ宮城、茨城など10都県の食品が中国に輸出できなくなった。翌2012年、こまち協会として中国への輸出に取り組み何度か北京に通い打ち合わせをしたが、尖閣諸島問題などにより断念した経緯がある。その際の経験が、その後の輸出のベースになっている。
     2016年に「大潟村農産物・加工品輸出促進協議会」が発足。こまち協会は立ち上げ時から参加し、年6、7回、香港やシンガポール、フランス、アメリカ、台湾などでの展示会や商談会に参加している。グルテンフリー食品は味や食感などが好評で、バイヤーからは他の商品と比べて断然おいしいという評価を得ている。しかし、その後の商談で尻すぼみになることが多いのが実情だ。取り引きにつながらない要因としては、価格と物量・物流、現地卸の3点が挙げられる。価格については、こまち協会から消費者が買い求めるまでに、輸出商社をはじめ、船会社、輸入商社、卸会社、小売店など、さまざまなコストが上乗せされ、高価格になってしまう。
     こまち協会は国内で32年の産直ノウハウをもっている。これを生かすことができないかと考えたのが、日本の物流会社(佐川急便)の世界ネットワークとの連携だった。

    第7回会員例会/第2回地域と農業を考える委員会
    講演する加藤貴之氏


     これまではこまち協会から輸出会社、船会社、輸入商社を経て海外の卸会社や飲食店に届いていたものを、こまち協会から佐川急便、現地倉庫を経て海外の卸会社や飲食店に直接届くようにした。輸出入の商社を省くことでコストダウンを図った。ただし、代行輸入者となるパートナーの選択は重要。また、売れ残りや賞味期限切れなどによる在庫リスクを解消するための見極めも大切だ。
     農林水産省の補助事業「新たなビジネスモデルの構築等の実証的取り組み」を活用し昨年11月11日、実証実験として台湾に向けて精米、玄米、発芽玄米、パックライス、甘酒、水の計9.3トン(16パレット)を仙台港から送った。11月15日に仙台港での通関・積み込みを終え16日に東京港へ。20日に東京港から台湾・基隆港に向かった。27日に届き、台湾倉庫への入庫は12月6日。11日から18日まで開かれた秋田物産展に出品したが、精米と甘酒が人気だった。販売価格は従来の輸出に比べ甘酒で3、4割ダウン(国内価格の1.6倍程度)、水(白神山水)も他店より4割安く販売できた。ただし、精米については百貨店や代理店の要望で、従来価格より1割程度だけ下げて販売した。なお、海外では精米日の古いコメでも「新米」として売られていることもあり、精米機を設置し精米日の新しい商品を提供できるようにした。
     今後は、秋田港を利用すれば陸上輸送コストが下がり、さらなるコストダウンが可能になる。また、海外では秋田のみそやしょうゆについて尋ねられることも多い。「地域商社」設立に向けて、県内企業が結束し輸出の道を開拓したい。
     講演後、出席者から「県はどのような指導をしているの」の質問が出され、加藤さんは「静岡県ではお茶の輸出について一つの課(お茶振興課)で対応しているというが、秋田県の場合、輸出は産業労働部商業貿易課、加工品開発は観光文化スポーツ部秋田うまいもの販売課、米は農林水産部農業経済課販売戦略室など多岐にわたっているので、ワンストップで対応してもらえる部署があるとありがたい」と答えていた。このほか、出席者からは「農業も林業も重層的な流通がネックになっている。きわめて興味深い講演だった」との感想が出ていた。

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