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  • 「国の宝」をつないでいこう/第2回会員例会、県の嶋田森林技監が講演

    講演する嶋田理氏
    講演する嶋田理氏

     本年度の第2回会員例会が7月29日、秋田ビューホテルで開かれ、会員43人が出席、県農林水産部の嶋田理・森林技監が「あきたの木づかい」と題して、森林や林業、木材産業などについて講演した。嶋田森林技監は「秋田は県民歌にあるように『斧の音ひびかぬ千古の美林』を有する地であり、昔から『山の衰えは国の衰え』と山林立国を唱えてきた。国の宝である森林、林業をつないでいくために、育て、収穫し、適材適所で使い、再び植えるという資源循環のサイクルをきちんと回していかなければならない」などと訴えた。



     講演の主な内容は次の通り。

    Ⅰ 森林と林業・木材産業

     森林で材料となる木材を育て、収穫し加工する林業・木材産業は、「伐って、使って、植えて、育てる」という好循環により大きな効果を上げることができる。
     平成20年と同30年を比べると、全国ベースで国産材の使用割合、木材輸出額、国産材供給量、労働生産性のいずれも増えており、林業の成長産業化への兆しがうかがえる。

    Ⅱ 木材利用のいま

     森林には地球環境の保全、土砂災害の防止、水源涵養などさまざまな役割がある。その中の一つが木材生産であり、住宅用建材や家具、紙などの原材料となる木材を生産する働きだ。
     木材を利用する意義としては▽工法等の工夫により低コスト、短工期で仕上がるというビジネス面における効果▽他の資材に比べて製造時のエネルギー消費が少ないなど、地球温暖化対策への貢献▽持続可能な森林経営から供給される木材の利用はSDGsの取り組みに寄与するという、社会的課題解決に向けた効果―などが挙げられる。企業の経営戦略において、森林や木材を無視できない時代が到来しているといえる。
     一方、これまで木材需要の大宗を占めてきた住宅については、人口減から着工戸数は減少することが見込まれることから、低層住宅では外材から国産材への切り替え、RCなどが主であった中高層住宅や住宅以外の建築物では木材利用を促進することが重要になる。このような状況下、建築基準や防火関係の規定でも、木材の利用を進める方向で見直しが進められてきた。
     木材利用促進に向けた動きをみると、全国知事会における国産木材の活用を推進するプロジェクトチームの結成や、都市における中高層建築物や非住宅分野での木造・木質化を推進する議員連盟が発足している。加えて、秋田経済同友会も参加している(公社)経済同友会による木材利用推進全国会議の設立など、木材の利用促進に向けた取り組みが進展している。
     木材を活用した建築物としては、行政と大学、地元企業が連携して駅や自由通路、待合ラウンジ等を県産材による統一したデザインで木質化した「JR秋田駅」も好例だ。また、新国立競技場をはじめ、有明アリーナ、選手村ビレッジプラザなど、東京オリンピック・パラリンピック施設での木材利用も進んでいる。

    Ⅲ 秋田県の森林・林業・木材産業

     県内の林業総生産額は、昭和54年度の494億円をピークに減少傾向で推移し、平成14年には76億円となった。その後、微増しており平成29年度は122億5400万円で、前年と同額程度だった。県内総生産額に占める割合は0.3%となっている。また、第1次産業は1152億6900万円で、このうち林業は10.6%を占めている。
     さらに、平成29年度の木材・木製品の製造品出荷額等は757億2985万円で、県全体の製造品出荷額の5.5%。これは第6位の出荷額等となっている。なお、これにパルプ・紙、家具・装備品を含めた木材産業の出荷額は1284億7416万円となり、県総出荷額の9.3%を占めている。
     秋田県は県土の70%の84万haが森林で、このうち民有林が53%で44万8000haを占めている。人工林面積は県全体で48%、民有林では58%。このうちスギが92%となっている。
     スギ人工林面積は本県が全国トップ。スギの人工林蓄積、素材生産量はどちらも宮崎県に次ぎ第2位となっており、本県の資源は豊かだ。また、昭和43年に田沢で全国植樹祭が開かれ、翌44年度から実施された1万ha造林の施行地が利用期を迎え、民有林スギ人工林では全体の約5割弱(11.2万ha)が伐期に到達している。
     丸太の生産をみると、平成14年を底に、平成29年は昭和50年代の水準まで回復している。用途別では合板用の丸太の増加が顕著だ。丸太の生産量は、高性能林業機械の導入、道路網の充実に連動して増えている。
     また、丸太の需供給と木材加工をみると、輸入丸太の需要は激減し概ね県内産丸太になっている。そして、製材品をはじめ、集成材、合板、フローリング、銘木など、秋田スギや豊富な広葉樹を活用したさまざまな木材・木製品を生産しており、比較的高い技術が県内には残っている。さらに、主な木材製造品出荷額の約6割を合板が占め、製品の過半数が県外へ出荷(製材60%、合板98%、主製材90%)されている。
     林業・木材産業の成長産業化に向けて、県は第3期ふるさと秋田元気創造プラン(平成30年から4カ年)で、新時代を勝ち抜く攻めの農林水産戦略を打ち出している。「ウッドファーストあきた」による林業・木材産業成長産業化については、秋田スギを活用した新たな木質部材等による需要拡大、林業の成長産業化に向けた生産・流通体制の強化などを挙げている。また、地域資源を生かした活気ある農山漁村づくりとしては、森林の多面的機能の高度発揮などを挙げている。結果的には、全国有数のスギ人工林資源ならびに高度な木材加工技術や多様な品ぞろえといった特徴を生かして林業・木材産業の成長産業化につなげたい。

    第2回会員例会
    第2回会員例会

    Ⅳ あきたの木づかい

     本県の公共建築物等の木造率(延べ床面積ベース)は、全国で上位にある。国際教養大学図書館や秋田空港ターミナルビル、県庁正庁、県動物愛護センター、道の駅ふたつい、同おおゆなどのほか、JR秋田駅前では、公的な支援によるバスターミナルの整備を契機として、民間独自の木造・木質化が広がりを見せている。
     また、非住宅分野での木材利用に向けては耐火部材の研究を進めているほか、CLTの土木利用も進んでいる。さらに、試設計を通じ、木造・木質化に精通した建築人材の育成を支援したり、民間における非住宅建築物の木造・木質化を推進し県産材の需要拡大を図ったりしている。

    Ⅴ 「國の宝」をつないでいくために

     秋田県民歌の2番には「斧の音ひびかぬ千古の美林」の歌詞があり、かつての久保田藩家老の渋江政光は「国の宝は山である。山の衰えは国の衰えである」と山林立国を唱えている。
     本県の森林資源は成熟し活用期に入っているが、林業労働力の高齢化が進んでいる。森林、林業をつないでいくために、若い人材を育てるための林業トップランナー養成研修を開講している。また、再造林率2割程度を少なくとも5割まで高め、資源量を維持していく必要がある。今後は、国の宝である山を、育て、収穫し、適材適所で使い、再び植えるという資源循環のサイクルをきちんと回していかなければならない。

    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

     会員例会に引き続き、出席者たちは会場を移し、懇親ビアパーティーに臨んだ。ビアパーティーは佐川博之代表幹事の開会ならびに乾杯のあいさつで始まった。約2時間歓談した後、斉藤永吉代表幹事が中締めを行った。

    佐川代表幹事の乾杯あいさつで始まった懇親ビアパーティー
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