秋田経済同友会と県医師会との意見交換会が12月10日、秋田ビューホテルで開かれた。県医師会が新型コロナウイルス感染拡大の中での県内の医療体制やウイルス対策の現状を報告。同友会員はコロナを正しく理解し企業の感染対策を考えるための参考にした。同友会からは平野久貴代表幹事ら15人、県医師会からは小玉弘之会長はじめ常任理事ら9人が出席した。
経済同友会は新型コロナウイルス感染拡大を受け、ことし6月に「コロナ禍対策特別委員会」を設置し活動している。具体的には▽学生に対するコロナ禍対策支援金の寄付活動▽コロナ後の経済対策の提言▽県内の医療体制を確認し支援活動を検討する―の3項目を掲げ、この流れに沿って今回の意見交換会を開催した。なお、意見交換会は急きょ開催することになったため、代表幹事・副代表幹事、各委員会の委員長・副委員長、コロナ禍対策特別委員会の委員に呼び掛け開催した。
意見交換会では、経済同友会の平野代表幹事が「コロナについてはもちろん、デジタル化の流れに伴う遠隔診療の問題、高齢化が進む中での地域医療の在り方なども教えていただきたい」、県医師会の小玉会長が「人口減少が進む中で、地方でも医療機関の生業がたつようなシステムを考えていかなければならない。医師会としての提言もしながら県内の医療を支えていきたい。また、医療がしっかりしていれば経済も成り立つ。医療と経済は持ちつ持たれつの関係ともいえる。充実した意見交換会にしたい」などとあいさつ。引き続き、県医師会の鈴木明文副会長が「新型コロナウイルス感染拡大 秋田県の医療対応」と題して講演した。主な内容は次の通り。
新型コロナウイルス感染症の経緯としては▽約80%が発症から1週間程度で風邪の症状や臭覚味覚障害を起こすが、軽症のまま治癒する▽1週間から10日で呼吸困難やたん、咳が出るなど肺炎症状が増悪し、約20%が入院▽2、3%は10日以降に人工呼吸管理になり集中治療室へ―などが挙げられる。重症化のリスク因子としては65歳以上の高齢者、慢性腎臓病、糖尿病など。特効薬はないが、治療薬にはレムデシビル、デキサメタゾン、アビガンなどがある。また、潜伏期(14日間)のうち、発症するピークは4~6日だが、発症前から人に感染させる可能性があることが医療現場を混乱させている。
ことし4月7日、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言(5月6日まで)が、東京都をはじめ、大阪、埼玉、千葉など7都府県に出され、5月4日には5月31日まで延長。その後、エリアを縮小し、5月25日に解除宣言が出た。その後、GoToキャンペーン事業に1兆6700億円余の補正予算案が組まれ7月22日にスタートした。11月27日の新型コロナウイルス感染症対策本部では、短期間(3週間程度)に現在の感染状況を鎮静化するためには、政府や自治体、さらに一般の人々や事業者も含め、社会全体が共通の危機感を共有し、現在の状況に一丸となって対処することが求められるとし、現在に至っている。
県内では、「秋田県危機管理対策本部」が今年2月7日に設置され、3月26日に廃止。同日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「秋田県新型コロナウイルス感染症対策本部」となっている。11月29日の対策本部会議では、12月1日からの県外との往来、基本的な感染対策の実施、各施設における感染防止策の実施、誹謗中傷の禁止などが協議された。
感染者の発生状況については、8月にJRバスケットボール部関連、11月にはニュークラブACE関連のクラスターが発生。要入院・療養者数は11月28日現在、19人だった。また、年代別では20代、30代で半数を占め、感染者の60%が秋田市となっている。さらに、相談、検査、外来医療、入院医療などの体制に加え、高齢者福祉施設や障害者支援施設の感染防止体制などを紹介した。感染症対策としては「マスクは有効。3密を回避することはもちろん、空気感染、飛沫感染、接触感染を防ぐための換気、手洗い、うがいなど基本的なことを守ってほしい」と訴えた。
講演後、会員から「コロナ禍における医療、福祉事業者の経営への影響が気になる。今後は遠隔診療という方式も取り入れられると思うが、かかりつけ医の遠隔診療への方向性、または対応の進み具合はどうか」「患者の医療データについて、企業での健康診断データも含めてデジタル化できれば、遠隔診療の際も担当医には有効だと思う。また、子供たちの健康診断の情報について、母子手帳からつながる医療情報がデータ化されれば多方面での対応が変化するのではないか」などの質問が出された。
これに対して県医師会は「コロナ禍での健診医療のあり方については、どのような形で実施できるかしっかり考えなければならない。オンライン診療については県医師会が対応に取り組んでいる。例えば、大学病院の上級医が地方のかかりつけ医に手術をオンラインでアドバイスすることもできる」「子供たちの医療データについて、教育委員会とつながっているのは各地区の医師会。教育委員会との話し合いが必要だ」「健診データは生まれたときは厚労省の扱いで、就学すると文科省、社会人になれば厚労省と国の管轄が変わる。母子手帳からのつながりが切れてしまうのが実情。一貫していれば効果が出るだろうが、個人の情報は個人が持つべきだという考えもあるので、今後の課題になる」などと答えた。
意見交換会後は懇親会が開かれ、講演や意見交換の感想を述べ合うとともに親交を深めた。