本年度の第1回会員例会が6月19日、秋田キャッスルホテルで開かれ、会員22人(代理を含む)が出席、秋田大学大学院医学系研究科公衆衛生学講座の野村恭子教授が「40代からの生活習慣:生涯健康でいられるために」と題して講演した。野村教授は「運動しないことは、たばこを吸うと同じくらいに悪いことだというのが最近の常識となっている。自分に合った運動を習慣化するメリットを見つけよう」などと呼び掛けた。講演後の質疑応答では会員が「薬を服用しているが、それでも健康と言えるのか」など日ごろの健康相談を尋ねる会員も多かった。
講演の主な内容は次の通り。
戦後豊かな経済社会が実現し平均寿命が約50歳から約80歳に伸び、人生90年時代も間近になっている。生涯現役を前提とした経済社会システムの再構築が必要になっている。企業としては、健康管理を経営的視点から考え戦略的に実践する健康経営に努める必要がある。
★喫煙者が多い秋田県
平成20年から28年までの定期健康診断の有所見率をみると、直近の5年は①コレステロール・高脂血症②高血圧③糖尿病―と大きな変化はなく、まさに生活習慣病が多い。秋田県の特徴として▽喫煙者が多い▽酒飲みが多い▽塩分の取り過ぎが多い▽運動をしない―が挙げられ、前述の結果を招くことにつながっている。なぜ生活習慣病の予防が重要か。生活習慣病を川の流れに例えると、不健康な生活習慣が肥満や高血糖、高血圧・脂質異常などのリスクを生み、メタボリックシンドロームになる。リスクが重なり進行すると、脳梗塞や心筋梗塞などの病気が発症し取り返しのつかない状態になる。
秋田県の特徴の一つに喫煙者が多いことを挙げたが、男性は34.2%で全国7位。たばこは高価な嗜好品だが、秋田は年収が低いのに喫煙率は高い。また、最近の調査では喫煙率と学歴には大きな関連があるとも言われている。たばこの害についての教育が大事だ。喫煙する男性の場合、死亡の可能性が咽頭がん32.5倍、肺がん4.5倍、口腔がん2.9倍になるなど、軒並み上がっている。また、妊婦の場合、低体重の子供を産む傾向にある。30年以上たばこを吸っていると、確実に肺が機能低下に陥る。今は加熱式たばこの時代だが、これもニコチンを排出するので有害。血管内皮機能への影響は従来のたばこと同程度と言われている。さらに、加熱式たばこは発がん物質も多く排出するという調査結果もある。
★塩分の摂取量も多い秋田県
県民の食塩摂取量は10年前と比べて減少傾向にあるが、全国と比較するとまだ多い。男性の平均は11.7g、女性の平均は9.7gで、県は8gを目標値としている。食塩の取り過ぎは胃がんの発生リスクを高め、男性では胃がんの死亡率が全国1位となっている。
一方、高血圧と動脈硬化の悪循環が重大な病気を招く。放置すると動脈硬化が進み、血管が詰まったり、破れたりする。脳出血や脳梗塞、くも膜下出血、腎機能障害、腎不全、狭心症、心筋梗塞、心不全などを招くことにつながり、要介護や突然死の危険性が高まる。高血圧予防で心がけたいことは▽食塩は1日6g未満にする▽野菜や果物をとる▽1日30分程度の運動▽節酒▽禁煙―など。
秋田県の生活習慣では、運動をしないことも目に付く。メタボリックシンドローム、大食い、酒飲みには注意が必要だ。メタボは肥満や脂質異常、高血糖、高血圧につながり、心疾患の発症リスクを高める。最近は「運動をしないことは、たばこを吸うと同じくらいに悪いこと」が常識になっている。では、どうしたら運動習慣を持つことができるのか。強い意志は必要ではなく、気が付いたら無理なく続いていた、というコンディションにもっていきたい。運動が脳によい効果を与えるということを知ったうえで、自分に合った運動を習慣化しよう、と締めくくった。
★たばこはだめでも薬の服用はOK
講演後、出席者たちからは「薬を飲んでいるがゴルフはできる。健康といえるのか」「薬で血圧を120以下に抑えているが、薬を飲み続けていいのか」「禁煙は難しい。医師との相談が必要か」「年齢と運動との兼ね合いは? 」「定期健康診断の有所見率に改善がみられない。定期健診の効果はあるのか」などの質問が出た。
野村教授は「薬を飲むことで健康を保っているのであれば、飲み続けて大丈夫。喫煙はだめだが、数種類の薬なら構わない。ただし、6種類以上の薬を服用する(ポリファーマシー)は、10年後に影響が出ることが多いので避けたい。複数の薬を一つにできないかなど医師と相談してみてはどうか」「喫煙習慣についてはニコチン中毒と、格好をつけるために吸っている人と2パターンがある。ニコチン中毒であってもやめることはできるし、格好だけの人は比較的無理なく禁煙できる」「ひざが悪いにもかかわらず、無理に運動するのはだめ。上半身だけの運動にするなど、工夫して運動を心がけてほしい」「定期健診の効果については、医師の気持ちが伝わらないのか、受診者自身に改善する気が少ないのかなど難しい点もある」などと答えていた。