地域開発委員会の主管で第1回健康講座が、令和2年11月25日、秋田ビューホテルで開かれた。平成29年度に始まったビジネスマン健康達人講座が、コロナ禍のためにこれまでの形式での開催が難しくなり、会員ならびに会員企業の従業員を対象として講演会を開催。当日は会員7人、会員企業の従業員21人が出席。BFホールディングスの管理栄養士でNR・サプリメントアドバイザーの谷口典子さんが「毎日の食事が健康を作る ~少しの工夫で食生活の改善を~」と題して講演した。
講演の主な内容は次の通り。
今年はコロナ禍で何を食べたらコロナに効くのか、どうすれば免疫力が上がるのかという質問が多かった。5月には秋田魁新報に免疫力を高める食事のレシピを掲載。バランスよく食べることの大切さを伝え反響が大きかった。
腸内環境を整えると免疫力が上がると聞いたことがあると思う。腸は1本の管で内側は外界と接しているので、ウイルスなどの外敵と戦うためには腸内環境を整えることが大切。腸内環境を整えるためにはバランスよく食べることを心がけてほしい。
しかし、バランスよく食べることは意外と難しい。人間は消費するエネルギー量、必要とする栄養素と量、食べものがそれぞれ違うので、バランスよく食べているか、必要な栄養が取れているかを評価することはなかなかできない。
評価の基準について、以前は性別、年齢、身長などを基に栄養指導したが、最近は個人差や生活状況の違いから体重の変化を基準に評価。毎日バランスよく食べ、必要なエネルギーが取れていれば体重の変動は少ないので、毎日決まった時間に体重を測ることでバランスの取れた食事ができているか評価できる。食事は好みがあるので大きく改善することは難しいが、毎日食べているものを少しずつ改善する工夫をしてほしい。
健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間。簡単に言えば介護を受けずに自立した生活ができる期間。秋田県の健康寿命は女性74.5歳で全国33位、男性71.2歳で最下位。介護が必要になる主な原因は認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱などで、食事に関係するのが脳血管疾患。動脈硬化を防ぐことが重要とされる。動脈硬化は高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満、喫煙、飲酒などの要因で進行するので生活習慣が原因。これを防ぐにはバランスの良い食事を心がけることが大切。
炭水化物、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンの5大栄養素のうちエネルギー源となるのは炭水化物、たんぱく質、脂質。中でも炭水化物は脳に必要なエネルギー源。炭水化物の摂取が少ないと体は筋肉などを作るたんぱく質からエネルギーを補おうとするため、バランスよく食べなければせっかくの栄養摂取も違う方向に使われてしまう。炭水化物、たんぱく質、脂質の分解にはビタミンB群が必要で、ビタミンB群を含まない菓子パン、ラーメン、チョコレート、ビールなどを多く食べる人は、炭水化物が中性脂肪や皮下脂肪として体内に蓄えられる。肉、魚、牛乳、乳製品にはビタミンB群が多く含まれるので、これらたんぱく質も食べてビタミンB群を摂取してほしい。
清涼飲料水・炭酸飲料水は糖質が多く、特にブドウ糖液、果糖液など吸収の良い糖が含まれる。多く飲む人は糖尿病のリスクが高い。また、炭水化物の取り過ぎも糖尿病のリスクが高く中性脂肪も多い。脂っこいものを食べなくても取りすぎた糖分は中性脂肪として体内に蓄えられるので、ご飯や甘いものを多く食べる人は注意が必要。
脂肪(油)については魚の脂肪(特に青背魚)、植物油(オリーブ油、ごま油、アマニ油など)が良いとされ、動物性油脂(バター、ベーコン、バラ肉など)は取り過ぎに注意したい。しかし、脂肪は少量でもカロリーが高いので体に良い脂肪でも取り過ぎは注意。
毎食バランスよく食べてもらいたいが、できなければ1日や2~3日で調整してもらいたい。1食の量は自分の手のひらを使う手ばかり法で、肉や魚は片手(80~100g)、野菜は生の状態で両手いっぱい(約120g)を目安にしてもらいたい。男性や活動量の多い人は足りない分を主食や主菜、乳製品などで調整してほしい。
野菜は1日350g食べてもらいたい。秋田県は全世代が野菜不足で特に20代と40代が100g以上不足。食べ方として一皿70gを目安に5皿食べるように考え、例えばホウレンソウのおひたし、レタス・トマト・キュウリのサラダ、かぼちゃの煮物、キュウリとワカメの酢の物、野菜多めの味噌汁などサラダだけでなく、炒め物、煮物、味噌汁などにして食べるといい。
2020年の日本人の食事摂取基準によると1日の塩分摂取量は男性7.5g未満、女性6.5g未満で年々減少。秋田県の塩分摂取量の目標値は8g未満でこちらも年々減少しているが基準に比べるとまだ高い。ちなみにWHO(世界保健機関)の基準は5g未満。人間が1日に必要とする塩分量は1.5gと言われているので、塩分はいかに嗜好として取られているかがわかる。ラーメン1杯には約7gの塩分が入っていて、これは1日の摂取基準に相当。スープを飲まなければ50%の塩分カットができる。昼にラーメンを食べたときは夕飯の味噌汁を控えるとか醤油の量を減らすなど工夫してもらいたい。薄味が合わない人はダシで補う方法がある。手軽な市販の減塩タイプのダシを使ってもいい。酢や柑橘類、香辛料などで補う方法もある。また、トンカツなどはソースをかけずにつけて食べるとソースの量が半分にできる。生活習慣なので毎日少しずつ工夫し自身の口を薄味に慣らすことも大事。高血圧学会も減塩商品の利用を推進している。塩分が気になる人は利用してはどうか。
アルコールの摂取について厚生労働省は、男性ビール500ml、日本酒1合など純アルコールにして20gが適量としている(女性の場合はこの半分)。脳血管疾患、胃がん、大腸がんなどの健康障害は酒の影響もある。痛風はビールに含まれるプリン体が原因と言われているが、アルコールには代謝をよくする作用があり、エネルギー代謝のために尿酸がたくさん作られる。プリン体だけでなくアルコール自体にも原因がある。ほかに肥満も原因の一つで痛風の人に肥満が多い。少しでもカロリーをカットするために糖質ゼロ、プリン体ゼロの酒を利用したり、ノンアルコール飲料で休肝日をつくるのも一つの方法。ただし、糖質ゼロに関しては人工甘味料を使っているため安全性を疑う声もある。あまり過信せず上手に利用してもらいたい。
おつまみは食事のおかずと同等が基本。脂っこい揚げ物を避け豆腐、魚、チーズなど良質なたんぱく質で肝臓の機能を高める。野菜、海藻、きのこ料理などはコレステロールや糖分の吸収を緩やかにするので低カロリーになる。
新型コロナウイルスの感染拡大で外食や宴会が少なくなっていると思う。この機会にバランスの良い食事について考えてほしい。