【第3回国際活動委員会】(令和3年2月2日、秋田ビューホテル)
委員9人と国際教養大から豊田哲也アジア地域研究連携機構長・教授ら3人が出席した。「AIUデザインLAB」について、株式会社141&Co.の代表取締役・石井宏典氏が紹介と提案、合同会社ジェグルズの代表・工藤実氏が共同事業体「J-1」を紹介し会員に協力を求めた。また、新年度活動方針の大枠を決めた。
委員会では、はじめに平野久貴代表幹事が「石井さん、工藤さんからは、私たちが持っていないような秋田を活性化するための戦略的、野心的な話をうかがえればと思っている」、加藤俊介委員長が「コロナを一つの転機に、これからの国際活動委員会の活動について考えたい。石井さんと工藤さんの話を参考に、デザインラボに対して委員会として何ができるかなどを探りたい」とあいさつ。引き続き、石井氏の講演に移った。
石井氏の主な講演内容は以下の通り。
「AIUデザインLAB」は秋田の未来をデザインすることを目的に、国際教養大学内に設置したラボ(研究所)。秋田銀行主催の「あきた未来塾」の参加企業と連携し、AIU生が実際の企業課題の解決に挑む。これにより課題解決能力や主体性が育まれ、社会に貢献できる人材を輩出することを目的としている。
具体的な取り組みとしては▽田沢モータース(2019年6月~現在)▽安藤醸造(2019年6月~12月)▽斉藤光学(2019年6月~現在)-の3プロジェクトを紹介した。プロジェクトでは、各社の事業課題に対してAIU生10人程度のプロジェクトチームを組成し課題解決を支援。研究員がファシリテーター(促進者)として加わっている。
その後、石井氏は秋田経済同友会に一つの提案をした。第一段階(調査フェーズ)では、秋田経済同友会とAIU が設定したテーマに基づき、AIU生と企業が共同調査を行い、社会実装可能な調査成果を創出する。第2段階(実践フェーズ)では調査成果を共有資源として活用し、社会で実践するため、2コースに分かれて事業を推進する。その結果、新規事業の創出を通じて課題解決能力が備わったAIU生が輩出され、インターンシップ受け入れ企業や産業全体の発展につなげるとした。
会員からは▽コンパクトシティー化が秋田の課題の一つと考えるが、その点について検討しているか▽県内の6割の企業で後継者がいないという。新規事業だけではなく学生が跡継ぎになるということは考えていないか▽現時点では石井さんの個人的な提案かもしれないが、今後私たちも共通のテーマを考えてはどうか▽同友会はスタートアップしたい学生にどのような手伝いができるかを考えることが原点と考えていた。提案は既に事業。私たちの原点とどう結びつけるのかが課題ではないか。もう少し咀嚼したい▽どれくらいの規模の起業家を育てるつもりなのか-などの声が出た。
これに対し、石井氏は▽デザインラボと同友会で共通のテーマを考えていきたい▽事業承継について、現時点では具体的な検討はしていない▽起業したいという思いはあるがビジョンがない学生もいる。そんな学生を支援したい-などと答えた。
また、豊田教授は「石井さんが提案したフェーズについては新年度、春からと秋からの1サイクル、それぞれ7、8人程度で実施したいと考えている。その中で3、4人程度が起業コースを選び、1人でも2人でも実践することになるだろう。今は5年に1人くらいが県内で起業しているが、今後は2、3年に1人でも起業することになればいい。なお、東京や横浜などで起業する学生も出ている。10年、20年後に東京や大阪、海外での経験を踏まえて秋田に戻ってきて起業すればすばらしいと考えている」。
その後、工藤氏が共同事業体「J-1」(秋田市ビジネススタートアップ支援事業受託者)について説明。▽将来の起業希望者を一定水準レベルまで増やす(交流事業の推進)▽秋田市の起業希望者の起業までを手厚くサポートする(育成事業の推進)▽起業後の事業継続性や事業拡大をサポートする(起業支援事業の推進)-の「3本の矢」を軸に昨年9月から「チャレンジオフィスあきた」を拠点として起業環境の活性化に取り組んでいる。
具体的には、交流事業として、県内外のゲストを招いた起業をテーマにしたセミナーや、主として大学生や若者を対象にした起業に関するワークショップを開催したり、ビジネス書だけの読書会を開いたりしている。また、育成事業としては、起業相談はもちろん、集中スクールやビジコン対策スクールも開いている。さらに、起業支援としては、起業家の志を共有し合い切磋琢磨し合うコミュニティー、事業拡大への勉強会なども開催している。
最後に、工藤氏は「経済同友会の会員には起業家投資機会(タイガーエンジェル)への参画、あきたアントレプレナーサポーターへの登録をお願いしたい」と述べた。
一方、豊田教授は「インターシップは難しいと感じている。頭はグローバルでも中途半端な英語しか話すことができない学生や、英語よりはきちんとした日本語を使ってほしいという学生もいる。ただし、学生はオンライン、ICTの話などは得意だ。コロナ禍で、世の中が変わろうとしている今、企業の皆さんは若い人の意見を聞き参考にしてみてはどうか。学生を企業に受け入れることで学生に何かを考えさせるとともに、学生が入ることで従業員に考え直すきっかけを与えることができるのではないか。学生は自分が役立つという経験をすれば、秋田を含め起業の自信につながると考える。できるだけ多くの同友会員の企業にインターンシップを受けれてほしい」と話した。
このほか、委員からの主な発言は次の通り。
〇インターンシップで学生を受け入れると従業員の刺激にもなる。中にはコミュニケーシ
ョン能力に欠ける学生もいるが、若い人なりの斬新なアイデアを持っている学生もい
る。地域のテーマを与えて学生に課題解決の考えを聞いてみたい。
〇インターンシップについては、受け入れ企業としてどれだけ学生の能力を引き出すこと
ができたのかという思いもある。
〇テレビとインターネットの融合などを考えていかなければならない時代。ビジネスを含
めて若い人たちに提案してもらえれば面白いのでないかと感じた。
〇秋田は事業継承で中小企業がなくなっているのが現実。起業ばかりではなく継承してい
くことに挑戦していくことも考えてはどうか。ヒト、モノ、カネを考えれば、継承して
カネを得て、足もとを固めていくこともあっていいのではないか。
〇後継者候補がいるからこそ難しいこともある。地元以外の人が継ぐことで新たなビジネ
スチャンスが生まれるかもしれない。
なお、令和3年度活動方針については、加藤委員長が以下の3点を主な案とした。
1.インターンシップの受け入れ企業となる。
2.「AIUデザインLAB」の実践報告を聞き、ラボに対してできる支援を行う。また、年
度末までにはスタートアップを希望する学生の報告を聞き、実現に向けてアドバイス
する。
3.例えば企業の事業承継・後継者問題など、調査テーマを検討し「AIUデザインLAB」
に提案する。
※ただし、コロナ禍に伴い中断している学生との交流会が実施できない状況が続くのであれば、テーマを決めた学生との交流会をリモートで開催することを検討する。