秋田経済同友会は4月21日、秋田市の秋田キャッスルホテルで「木材シンポジウム」を開いた。パネルディスカッションなどを通して温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」や国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けた森林資源の活用方法について考えた。
全国44の経済同友会などでつくる「木材利用推進全国会議」の秋田視察に合わせて開いた。県内外の林業関係者や同友会員ら計100人が出席。斉藤永吉代表幹事があいさつした後、東北森林管理局の宮澤俊輔局長が「カーボンニュートラルやSDGsを実現する森林づくりと木づかい」と題して基調講演。「森林は温室効果ガスを吸収しており、木材製品の使用は長期間、炭素を貯蔵している。建築資材としての木材は鉄などに比べて温室効果ガスの排出が少ない」などと森林や木材の役割と貢献について紹介。森林整備や木材活用をさらに推進するよう経済界に期待を寄せた。
パネルディスカッションは、県立大木材高度加工研究所の高田克彦所長がモデレーターとなり、パネリストは住友林業山林部の寺澤健治部長、三菱地所関連事業推進室の伊藤康敬専任部長、県森林組合連合会(県森連)の佐藤重芳会長、県木材産業協同組合連合会(県木連)の大坂真一理事長の4人が務めた。森林経営から木材加工、建築、バイオマス発電など一連の事業を手掛ける住友林業の寺澤部長は「ウッドサイクルを回すことで社会全体の二酸化炭素の吸収・固定に寄与していきたい」と述べた。マンション事業に携わってきた三菱地所の伊藤部長は「山の木が消費者に届くまで無駄が多い」と従来のビジネスモデルの課題を指摘し、鹿児島県の製材業者などと現地で設立した関連会社「MEC Industry」が製造から販売までを一貫して行い、木造建材コストを削減している事例を紹介した。
県森連の佐藤会長は、「伐採してもその後の植林費用がなかなか賄えない」という厳しい現状を打破して再造林に取り組み始めた思いを披露。大坂理事長は、県産材の利用拡大に向けた取り組みを紹介した。
モデレーターの高田所長は「加工や流通のコスト削減は長年の課題で、これからも業界を挙げて知恵を出し合っていこう。木材を使うことは、地球環境の保全や地域産業を育てることにつながっており、背景にあるそうした大きな目標を見据えて、少しずつ木材利用を増やしてほしい」と結んだ。
(文責・事務局)