秋田経済同友会は7月26日、特別講演会・懇親会を開き、日本郵船秋田支店の下村達也支店長が「秋田支店開設2年目の現在地と今後の展望」と題して講演した。洋上風力発電事業で期待される経済波及効果を紹介し、「再生可能エネルギーを推進力として地元と一緒に発展していくモデルをつくりたい」と述べた。
下村氏は1967年、大阪生まれ。京都大学を卒業し、90年に日本郵船に入社。客船事業やLNG、石炭、鉄鉱石輸送などを担当。資源エネルギー庁への出向や2度の海外駐在(カタール・ドーハ、中国・上海)を経て2018年から22年まで製紙原料グループ長。22年4月から秋田支店長を務めている。
下村氏は初めに日本郵船グループの事業全体を紹介。秋田との関係については1888(明治21)年から20年間、土崎支店を開設していたことや、1993(平成5)年から東北電力能代火力発電所向けに石炭運搬船「能代丸」を就航させたことなどの歴史を振り返った。秋田支店開設の目的については「秋田に加え、青森、山形、新潟で今後、洋上風力発電の事業化が見込まれており、秋田支店を拠点に営業体制を強化していく。洋上風力発電事業はエネルギーの安定確保や脱炭素、地域活性化などの課題を同時に解決する方策として有望。グループが培ってきた海や船の知見を生かしつつ、従事する人材の育成を通して安定した事業環境を築き、発展させたい」と述べた。
開設1年目の取り組みとして、訓練センターを男鹿市に設立し、県や男鹿市、地元企業などと連携しながら、洋上風力発電の専門作業員や作業船の乗組員養成に取り組んできたことを紹介した。今後の取り組みに関して、風車を建設する際に使われる「SEP船(自己昇降式作業台船)事業」と、維持修繕のため将来にわたって使われる「CTV(作業員輸送船)事業」に分けて解説。CTV事業では「乗組員や陸上支援員の雇用が生まれ、船に供給する燃料などの需要も継続的に生まれる」などと経済波及効果について言及した。CTVの乗組員は「日帰り勤務できる船員」であり、こうした働き方が秋田で広がれば「県外流出が多い若年男女に対して新たな地元職業選択肢の登場となる」と述べた。
このほか、温室効果ガスの排出削減につなげようと郵船グループが取り組んでいるアンモニアや水素のサプライチェーン構築の最前線などを紹介した。
講演に先立って佐川博之代表幹事が挨拶。日本郵船が59年ぶりとなる国内支店を秋田に開設した経緯や下村支店長の人となりを紹介。会員48人が聴講した。
引き続き開かれた懇親会では、斉藤永吉代表幹事が乾杯の挨拶。平野久貴代表幹事が中締めをして会を閉じた。