活動・お知らせ

  • お知らせ
  • 会員例会
  • 観光振興委員会
  • 人口減、「観光」が消費維持の切り札/サービスの質向上を/中央大・小林教授が講演

     秋田経済同友会は10月29日、ANAクラウンプラザホテル秋田で2024年度第1回会員例会を開き、中央大学総合政策学部の小林勉教授が講演した。演題は「政策から読み解く新たな観光のかたち。ローカルとグローバルが織りなすツーリズムに必要な考え方」。小林教授は「外国人旅行者10人の消費は、定住人口1人の年間消費額に匹敵するという国の試算がある。人口減少社会で消費規模を維持するためには、観光の活性化が切り札になる」と指摘。国内各地の事例を紹介しながら、「地域間競争が激しいので、常にサービスの質向上の努力が必要」などと県民各層にエールを送った。

    講演する小林勉教授
    講演する小林勉教授

     小林教授は、国際協力論、社会学、スポーツ政策論が専門で、「スポーツで挑む社会貢献」「地域活性化のポリティクス」などの著書がある。
     はじめに、国が2010年に策定した「観光立国・地域活性化戦略」や2016年にまとめた新たな観光ビジョンを紹介して、これまでの観光政策を解説。今後、重要となる視点としては「ディスティネーション・マネジメント」(旅行目的地別の戦略)を挙げた。日本各地には豊富な観光資源があるにもかかわらず、その多くが放置されており、観光情報は、自治体や民間事業者がばらばらに発信している現状を問題視。山梨、長野両県の3市町村にまたがる「八ヶ岳」の先進事例を挙げ、「旅行者にとって市町村の単位は関係ない。『1000メートルの天空リゾート』のコンセプトを掲げ、2県3市町村が共同で世界に情報発信している。従来の行政機構に依拠した体制ではなく、マーケット志向型の体制づくり、広域観光組織への再編が重要だ」と強調した。
     小林教授は、スポーツツーリズムの推進による地域経済活性化を研究する一環で、頻繁に県内を訪れている。県が策定した観光振興ビジョンと実際の取り組みについて言及。「秋田ノーザンハピネッツやブラウブリッツ秋田の試合には大勢の県外客が訪れ、交流人口の拡大につながる貴重な観光資源であるとビジョンで位置付けていながら、観光地点別の入り込み客数をまとめた県観光統計には、両チームの競技場のデータが載っていない」と指摘。掲げた方向性と施策がすれ違っているのではないか、と苦言を呈した。
     また、県の新秋田元気創造プランでは「全ての旅行者を歓迎するためのバリアフリーの推進」を掲げていながら、「車いすが通れない秋田駅西口バスターミナルや分かりにくい案内板」について実体験に基づいて指摘。旅行者の多くはSNSなどで情報発信している現状を踏まえ、「地域外から訪れる人々のフィードバックはサービス向上に欠かせない情報源。ネガティブな情報でも、早期に対応することでリピーターを増やす機会に結び付く可能性がある」と話した。その上で、「大きなビジョンを掲げることも大切だが、身近なことから始めることも重要。旅行者の声を効果的に収集し、それに基づいて迅速に改善を行う仕組みづくりを急ぐ必要がある」と提言した。

    発表する大崎雄也氏
    発表する大崎雄也氏

     この後、観光客の動態やニーズを把握するとともに、観光施策の効果を検証する一連の作業をデジタル化する「観光DX」の重要性を指摘。旅行計画アプリ「ぷらる」を運営する大崎雄也氏が、本県を含め、各地の自治体と進めている取り組みを紹介した。

     講演に先立って、例会を主管した観光振興委員会の小畑宏介委員長が挨拶。会員40人が聴講した。

    第1回会員例会
    第1回会員例会
    PAGE TOP