令和元年度ビジネスマン健康達人講座第2回が9月12日、秋田市保健所で受講者15人と地域開発委員会の金澤朗副委員長が参加して開かれた。秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻の佐々木久長准教授が「生きがいづくりとメンタルヘルス どんな人生を望んでいますか?」をテーマに、同僚みんなが元気になれる人間関係をディスカッションしともに考える形式で講演した。
冒頭、佐々木准教授は長テーブルに2人掛けを促し、隣の人と「この秋どう過ごすか」数分間の会話をしてもらった。佐々木准教授は「皆さん初対面でも楽しそうに話しているのでほっとした。大学を含め教育現場では『生きる力』を育むことが一番求められている。その核心は、どんな人ともやっていける力。それが弱い人は、気の合う人としか話ができない。自殺の要因には孤独、話し相手がいないことがある」と、自殺予防の研究・実践の経験から指摘した。近年、本県で自殺が減少傾向なのは一昨年夏の集中豪雨や昨年夏の金足農高の甲子園での活躍など社会現象の影響もあるものの、傾聴ボランティア養成講座の修了者がこの10年で4千人を超えたことも大きな要因に上げた。
今年、県内の非進学校の普通科・定時制などの生徒940人に行った調査では、死にたいと思ったことが「ある」は455人、そのうち最初に思ったのは「小学生のころ」27%、中学生まで含めると約8割を占めた。 佐々木准教授はこの感想も含め隣人と再度話し合いを促し、少し間をおいて互いに「自殺の予定」を尋ねてみるよう勧めると受講者からは笑いと驚きの声が。「メンタルヘルスの基本的理解は、最悪の結果は自殺だということ。阿吽の呼吸をよしとする日本と違い、欧米はまずこれを聞く。心の健康は個人差が大きく、客観的な判断が難しい。普通に働いていたのに突然自殺したというのが、日本は多い」と佐々木准教授は、メンタルヘルスのポイントを3つ挙げた。1つはストレス。無理な気持ちにさせる人とは適度な距離を保ち、仕事は75%程度の力で優先順位をつける。目安になるのは、睡眠と楽しい時間があるかどうか。部下や同僚の顔を見ながら、笑顔があるか、「よく眠れるか」「悩みはないか」と尋ね、危ないと感じたら「死にたいと思うことは」と聞くよう勧めた。
2つ目はさみしさ、つながりたいのに誰もつながってくれない孤独感。依存症に陥りやすい。趣味でのつながりをつくる、あるいは思い出すだけで元気になれる人を忘れない。親がスマホ依存だと、子どももさみしさからスマホ依存になり、人間関係が苦手になる悪循環になりやすい。そこに悪い大人がつけこむ事件も相次いでいる。
3つ目は安心感。困った時に否定されずに受け入れてもらえる確信が安心感につながる。怒らず話を聴いてくれる人に相談し、一人で悩まない。心が健康なら悩めるし、欲求と環境のバランスがとれる。心が不健康になると悩みすぎ、気分転換できなくなる。現実感を失い、安全への逃避として休職となる。
職場のメンタルヘルスで大事なことは、一人ひとりが個性的で、考え方や感じ方が違い、その人らしく生きることを肯定すること。自分は大切、相手も大切のバランスをとる。この姿勢がアサーションで、人権、自分らしさ、一緒に生きるがキーワードになると強調した。
最後に佐々木准教授は、受講者を4グループに分け10分ほど自由に話し合ってもらったうえで、各班から1人に感想を求めた。どの班も一瞬目を見あわせながらも自然に誰かが立ち上がり、話し合った内容をまとめたり、「初めて話したのに、楽しく会話ができた」などと話したりしていた。