ビジネスマン健康達人講座の第4回講座が11月15日、秋田市保健所会議室で開かれ、受講者14人と会員3人が参加した。当会会員の旭北歯科医院・千葉利昭院長が「歯と口のケアからはじめる健口長寿」と題して口腔衛生について講演した。
主な内容は次の通り。
かつて流行った「リンゴをかむと 歯ぐきから血がでませんか」のCМフレーズを紹介した後、歯周病患者の口内写真や歯周組織の状態を示した。歯周病の罹患率は年齢とともに上昇し、成人における罹患者の割合は約80%。抜歯の原因となった歯科疾患としては、歯周病が41.8%で、むし歯による抜歯32.4%を上回り、歯周病が歯を失う原因のトップになっている。
歯周病になると、口の中の細菌が誤嚥や血液を経由し全身へと流れ、脳梗塞や誤嚥性肺炎、心筋梗塞、心内膜炎、動脈硬化、低体重出産、早産など、さまざまな疾患を引き起こすことがある。例えば、口の中が不潔でプラークが多いと、プラーク中の歯周病や炎症性サイトカインが唾液に混じり、喉頭から気管に入る。気管や気管支の粘膜で歯周病が炎症を引き起こしたり、気管や気管支で炎症を引き起こす他の病原菌の働きを助けたりすると、気管支炎や肺炎になる。さらに、中高年者では、歯周病がアルツハイマー病の悪化因子となることが示されるなど、口腔ケアの重要性が叫ばれている。
むし歯予防に大切なのは正しい歯磨きであり、基本は一本ずつ丁寧に磨くこと。握りはペングリップで、小刻みに磨くことを心がけよう。また、歯間ブラシやデンタルフロスなどアイテムを活用することが効果的だ。さらに、口臭を招く舌苔の清掃も忘れないように。ただし、セルフケアには限界がある。歯科医院で歯石を取るなどの口腔ケアを受けた人の肺炎の発症率が低いという統計もある。健康寿命を延ばすためには、歯と口のケアが大切だ。
東京都杉並区が歯科健康診査に力を入れたところ、医療費が低くなったという調査結果がある。杉並区の受診率は17%程度だが、昨年の秋田市の受診率は2から3%と極端に低い。歯が痛くなってからでは遅い。生涯にわたり自分の歯で食べ、生活の質を高めるためには、かかりつけの歯科医をもってほしい。
千葉院長の講話を終えた後は、「ふりかえりの時間(リフレッシュタイム)」。秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻の佐々木久長准教授が受講者をグループに分け、講話の感想や質問を話し合ってもらってから、各班の代表者が話し合った内容を発表した。この中では▽毎食後、すぐに歯みがきをする必要はないという人もいるが、歯みがきし過ぎということはないか▽歯科医院には歯科、口腔外科、小児歯科、歯科矯正-などいろいろあるが違いは?▽インプラントについて―などの質問も出され、千葉院長は▽食後ある程度経ってから歯磨きをした方がいいという説もあるが、虫歯を防ぐという意味では、口の中の汚れはすぐに落とした方がいい。「食べたら磨く」が基本▽歯科が一般的だが、それぞれの分野を示している。ちなみに、当医院で矯正は行っていない▽インプラントは利用者に喜んでもらえるケースが多いが、治療に時間がかかり高額なことがネックになっている。ただし、興味があるなら歯科医と相談してみる価値はある―などと答えていた。
なお、次回第5回講座が本年度の最終講座。12月13日(金)午前11時から秋田ビューホテルで食事と健康について、管理栄養士が講話する。